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1. 対象は金銭や延納で納付できない相続人
「頭金は老後の万一の資金として残しておき、土地を物納して相続税を納めたいと考えています」と言い切る方に時々出会いますが、これは通らない理屈です。現金をはたき、そして将来の収入を延納に充当しても、なお納めることができない相続税の相当額が残る人にのみ物納が認められているのです。ですから、物納した人のその後の生活は大変窮屈なものになるでしょう。ただし、健康的で文化的な最低条件の生活は、憲法が保証しております。
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2. 境界明示
物納する土地の隣地との境界は、官・民境界も民・民境界も明示杭を打って明確にしておかなければなりません。また、通常はこの境界線にはフェンスを施設することを税務署から求められます。実際の物納作業の中では、この境界明示が一番やっかいで、かつ費用がかかります。
例えば、隣地の人と20年も昔から紛争中の案件が横たわっていたとしたら、この土地の物納はまず困難でしょう。また、隣家の屋根や樹木、クーラーの室外機などが物納しようとする土地の上に侵入している現状があるとしたら、今のうちから撤去を求めるなど交渉に入っておく方がよいでしょう。いずれにせよ、隣地との境界の調整は、相手の心情にも配慮して、相続の日がやって来るまでに早めに確定しておくことが肝要です。相続が発生してからでは、昔のことを知らない息子さんたちが交渉を仕掛けてゆくことになるのですから、一代格落ちにならざるを得ません。お父さんの健在な時に境界を確定しておきたいものです。
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3. 道路の確保
道路に接していない土地は物納できません。4m
以上の道路に接道していないと、建物が建築できないのです。「この土地なら手放してもご先祖様から叱られない」などと言い、無道路地を物納用地として選定している方も時々いらっしゃいますが、これは困ります。どうしてもその無道路地で物納をとお考えでしたら、なんとか隣地と交渉して、売買か交渉で接道する道路を生前に確保しておきましょう。
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4. 担保の抹消
担保が付いている土地は物納できません。法務局で登記簿をあらかじめ確認しておきましょう。最近の事例で、昭和18年に付いた1,000円の担保が、今日までずっと残っていて大騒ぎになったことがありました。
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5. 老朽貸家の立退き交渉
貸家も入居者付きで物納することが、一応は可能な財産ですが、古い貸家で低家賃のものは現実的には困難です。国の予定している適正家賃、適正地代まで増額することが難しいからです。今から長期戦でじっくりと立退き交渉に入り、相続の時には老朽建物を解体撤去して更地で物納する方が有利になるでしょう。相続の時点では入居者が満室で、1年後には更地にして物納できれば理想的でしょうね。
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<物納劣後財産> -不動産の場合の一部例示- 次のような財産は、他に物納する適当な財産がない場合に限って物納に充てることが可能となる財産です。
1.地上権、永小作権、地後権等が設定されている土地
2.違法建築の建物及びその敷地
3.仮換地指定以前の土地区画整理事業施工に係る土地
4.道路に2m以上接していない土地
(以下省略)
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